必勝ノ拍子
幻の戦意高揚映画「必勝ノ拍子」のサウンドトラック
2009年春ついにその全貌を現す。
国策映画会社「西方社」は、元主義者や大陸浪人、アナキストまでも出入りする戦時下においては異色の存在であった。
「西方社」名誉総裁である、日露戦争の英雄A中将の強力な庇護の元、主義主張を問わず、優秀な人材を抱えた同社は、戦時下の庶民の姿を写実主義的かつ、構成主義的ダイナミズムさえも漂わせる独特の表現で描いた、オムニバス形式の国策映画を得意としていた。
戦地での慰問上映で、西方社の映画を見た兵士たちの評判はすこぶる良かったが、軍上層部からは、「厭戦気分を醸成させる恐れがある」と不評であった。また、同時に敵性地域への慰撫宣伝用として広く使用されていたために、米軍からは、これらの作品の制作者・監督は危険思想を広める恐れがあるとして戦犯扱い必至と見られていた。
米軍情報機関は、正体の判らない彼らをコードネーム「tojo heihachiro」と呼んでいた。マッカーサー率いるGHQの進駐とともに、西方社の人員は戦犯として逮捕リストに上げられていたが、彼らの行方は戦後60年を経た今でも杳として知れない。
唯一残っている作品といわれる「必勝ノ拍子」は、終戦直後に完成したが、日本人に向けて上映されることは一度もなかった。そのフィルムは、GHQがアメリカに持ち帰り、米国防省のライブラリに納められたまま発見されていない。終戦間際に撮影された、荒廃した東京・広島・長崎の風景を納めたエピソード「新芽ノ結晶」がマッカーサーの強い怒りを買ったためといわれているが、真偽のほどは定かではない。
国策映画「必勝ノ拍子」
第一話: 蟹工場
樺太に残る最後の缶詰工場のラインが停止しようとしていた。
一時は北米向けの蟹缶輸出で隆盛を誇った工場だったが、それを運ぶ先も手段も日本には残っていなかった。工場長野末は、工場閉鎖を前に一部工員の不穏な動きを察知していた。
しかし、野末の予想を超える事態が起きる。
ソ連への缶詰工場施設ごとの投降を呼びかけるコミンテルン細胞が暴動を起こしたのだ。公然たる利敵行為に激しい憤りを覚えた野末は「コノ工場ハワシノ命ダ!ロスケニハ渡サン」と叫び自ら手塩にかけた工場を爆砕するのだった。
劇中挿入歌作曲: THE歩兵
試聴 (mp3)
第二話: 可変抵抗器
徴兵検査に落ちた男が、検査官である軍医に「体ニ可変抵抗器ヲ埋メ込マレタ!体力ハ十分ノハズナノニ、落チタノハ、可変抵抗器ヲ最小ニサレタタメデハナヒデスカ?最大ニシテクダサヒ」と懇願したが、軍医は精神を病んでいると一蹴し、精神病院に入れようとする。
男は、復讐を決意し、ナショナルの懐中電灯と散弾銃を購入した。
劇中挿入歌作曲: 無限軌道
試聴 (mp3)
第三話: 団体訓練
富士戦車学校では、来る本土決戦に向けて少年戦車兵の育成が進められていた。
一刻も早く"鉄獅子"に乗って鬼畜米英を撃滅したいと血気にはやる少年たちに対し、ベテランの教官はただひたすら足並みを揃えて走ることだけを教える。
中国大陸で全滅した戦車中隊の唯一の生き残りという教官への侮蔑と不信感から、不満を爆発させた少年兵は教官に直談判におよぶ。教官は静かに自らの戦闘経験を語り始めた。
少年兵たちにとってそれは驚くべき事実であった...
劇中挿入歌作曲: 無限軌道
試聴 (mp3)
第四話: 鐡輪
鉄道保線工、八十島右衛門は線路の枕木をビーターで突き固める作業中、線路に細工をする不審人物を見た。そのことを上司に報告した夜、国鉄に潜入したコミンテルン細胞によって八十島は殺害され、遺骸は機関車C56の罐で燃やされる。
数日後、熊本へ向かう軍用列車の中で単調な心地よい揺れにまどろんでいた義烈空挺隊員奥村少尉は不思議な白昼夢を見る。
人間の顔を持つ機関車(八十島)から「コノ列車ハ危ナイ。私ヲ今スグ切リ離セ」という霊告を受け取った。
目覚めた少尉は、拳銃を手に先頭車両に走る。そこで彼が見たものは見るもおぞましい光景であった。
劇中挿入歌作曲: THE歩兵
試聴 (mp3)
第五話: 回転体
健軍飛行場を飛び立った義烈空挺隊12機は、固唾を呑んで突入電を待つ司令部の期待をよそに、4機が発動機不調で脱落、4時間後に7機が突入前に撃墜されていた。残る1番機は伊江島沖で「静止」していた。
眼も眩むばかりの光を放つ回転体とともに...。
奥山隊長は、回転体から発する周期性のある発振音によるメッセージを受け取っていた。短い返電を送った直後、奥山隊長率いる1番機は対空砲火の止んだ読谷飛行場に突如出現した。
劇中挿入歌作曲: 無限軌道
試聴 (mp3)
第六話: 聴音機
呂号第○七(軍機のため番号は伏字)潜水艦は、数度に渡る危険なガダルカナル島への輸送任務を生き伸び、現在は米潜水艦が遊弋する日本近海の哨戒任務についていた。
元録音技師の山下は召集兵ながら非凡な聴音能力によって艦長からの全幅の信頼を得ていた。しかし、敵艦の攻撃より避退行動を優先する艦長は、艦隊司令部のみならず部下からも「艦長ハ敢闘精神ガ足リヌ」と陰口される始末だった。
ある日、山下は敵大型艦のスクリュー音を探知する。
千載一隅のチャンスに艦長の下した判断は驚くべきものであった。
劇中挿入歌作曲: THE歩兵
第七話: 新芽ノ結晶
1945年11月、元国策映画会社西方社は、文部省の嘱託で科学教育映画を細々と作りながらかろうじて糊口をしのいでいたが、米軍の無差別空襲の非人道性を世界に訴えるべくドキュメンタリー映画を自主制作していた。
しかし、いち早くその存在を察知したGHQホイットニー准将は米国防総省で買い上げるという名目での没収を命令した。一度も日の目を見ることなく、闇に葬られたかに思えた映画は、一ヵ月後突如小包で送り返されてくる。
その頃、米国防総省のフィルムセンターでは、なぜか科学教育映画「新芽ノ結晶」が上映されていた。フィルムをすり替えたのは、GHQに潜入した元陸軍中野学校出身者の仕業とも、共産党細胞の仕業とも」いわれているが真相は判っていない。
劇中挿入歌作曲: 孫娘
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